滝を見にいく

紅葉の山々へ向かう一台のバス。それは幻の大滝を見にいくツアーの一行だった。ツアーガイドの菅(黒田大輔)を先頭に7人のおばちゃんたちが山道を登っていく。しかし、山道をしばらく進んだ菅の様子がおかしい。周囲を見回しては、首を傾げている。すぐ戻ると言って7人を山道に残し、先へ行ってしまう菅。だが、いつまでたっても戻らない。… 突然のサバイバル生活に放り出されたおばちゃんたちは、果たして人生最大のピンチを乗り切れるのか。

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滝を見にいく

2014
★★★★★
★★★★★
65%
おすすめ度

2014年11月に公開された「滝を見にいく」のレビューです。

「滝を見にいく」は、「南極料理人」「横道世之介」「キツツキと雨」で有名な沖田修一監督が監督・脚本を手掛けた、山で遭難して7人の中年女性達が繰り広げるサバイバルを、沖田監督独特の間合いとテンポでユーモアに描いたヒューマン&コメディ映画です。

キャストには、沖田監督作品でおなじみの黒田大輔他、「40歳以上の女性なら誰でも応募できます」と銘打ったオーディションで勝ち抜いた、ほぼ素人の女性達 (演技経験がある者も含む)で構成されています。撮影期間はワークショップを含む、わずか16日間程で終えています。

©2014「滝を見にいく」製作委員会

ストーリーは幻の大滝を見に行く温泉付きツアーに参加した、お互い顔も知らない中年女性7人が、ツアーガイドがいなくなった事をきっかけに、試行錯誤しながら徐々に団結していくヒューマン&コメディ映画となっています。

沖田監督の映画は日本の監督の中で、唯一ほとんどの作品を観ているお気に入りの監督。なんとも言えないような間合いの会話やシーン、テンポは沖田監督にしか出せない武器だと思っています。海外で似たような間合いのセンスを持っているのは、ジャームッシュやウェス・アンダーソンが思い当たります。

メインキャストである7人の女性達を簡単に紹介すると、

  • ユーミン: 美容師
  • セッキー: 趣味は太極拳
  • ジュンジュン: 特技は手芸。
  • 師匠: メンバーの中で最年長。趣味はカメラ。スミスと同伴。
  • スミス: 趣味はカメラ。師匠の友達。
  • クワマン: 持病は腰痛。ユミと同伴。
  • ユミ: 趣味はオペラ。クワマンの友達。

ユニークな登場人物

女性達は良くも悪くも我が強い為、それぞれ好き勝手に行動しており、ツアーガイドの説明すら誰も聞いている気配がありません(一部聞いている人もいますが…)。師匠とスミスに至っては、趣味であるカメラで山の風景を撮るのに夢中で、一行から遠く離れて趣味に没頭しています。

そんな我が強い女性達の為、遭難した後にお互いギクシャクしたりする場面が多々あり、全くまとまりがなくなります。

まとまりがない状態から徐々に絆を深めて、危機に立ち向かう様はなぜか懐かしい気持ちになり、ほのぼのとこの映画を楽しむ事ができました。

中でも、ユーミンと腰痛のクワマンは、最初からバチバチと仲が悪く、なかなかの激しい喧嘩をするのですが、最後にはなんだかんだで仲直りして、友情が深まっていくのです。幼少期に誰もが経験した事がある懐かしさを、うまく表現していました。

女性達の中でも、師匠とスミスは際立っており、独特なオーラを出しています。個人的に好きなシーンは、遭難後にスミスが"とんがりコーン"好きの為、予備のとんがりコーンをばら撒いて、道しるべにしようとするシュールな場面。後半で展開される師匠のハードな恋愛トークも必見です。

©2014「滝を見にいく」製作委員会

前情報で、メインキャストがほとんど演技経験が無い女性と聞いていた為、映画として成立するのか多少不安でしたが、逆に映画のリアリティを深めてくれる特効薬となっていました。沖田監督映画おなじみの黒田大輔は、最初と最後のシーンにしか出てきません。メインキャストが素人の映画でも、ここまでの映画を作り上げるとは沖田監督の才能あっての事ですね。

ちなみに私お気に入りのキャラは、腰痛のクワマンです。映画が始まった頃はピンピンしているのですが、遭難して歩き疲れた時に持病の腰痛が発症して歩けなくなり、寝込んでしまうのです。キャラ設定も面白いのですが、キャストの顔がいい味出してます。学校で各クラスの保護者に必ず一人はいるような普通の主婦の風貌です。ちゃっかりキルティングジャケットを着てるあたりもクールです。

近年の映画史でも稀に見る程の、中年女性達で埋め尽くされた映画「滝を見にいく」ですが、シネルフレのインタビューで、“以前から、おばちゃんを撮りたいと思っていたのですか?“との問いに対して、沖田監督はこう語っています。

僕は「人間こんなものだよな」ということが滲むような生活感のあるものを撮りたくて、そうなるとおじちゃんやおばちゃんの方が絵になるのは確かです。おじちゃんやおばちゃんが飯を食っている光景は、生活臭しかしないですから。つい癖で年上の俳優さんに出演してもらいたくなりますね。

沖田監督が狙っていた"生活臭"がこの映画全体にうまく滲み出ていたと思います。ラスト近くで中年女性達によって展開される友情の数々は、沖田監督の映画の中でも一番ほのぼのとする場面だったと感じました。


映画「滝を見にいく」は全体を通して、もみじが彩る"紅葉の秋"にぴったりな、ほっこりする映画でした。紅葉が彩る秋山の雰囲気を楽しみたい方や、熟女好きの方やそうでない方もお薦めの映画です。