ハイ・ライフ

太陽系をはるかに超え宇宙を突き進む一隻の宇宙船「7」。その船内で、モンテ(ロバート・パティンソン)は生まれたばかりの娘ウィローと暮らしている―。宇宙船の乗組員は、9人全員が死刑や終身刑の重犯罪人たち。モンテたちは刑の免除と引き換えに、美しき科学者・ディブス医師(ジュリエット・ビノシュ)が指揮する“人間の性”にまつわる秘密の実験に参加したのだった。だが、地球を離れて3年以上、究極の密室で終わり無き旅路を続ける彼らの精神は、もはや限界に達しようとしていた。そんな中、ミッションの最終目的地「ブラックホール」がすぐ目の前に迫っていた―。

予告編
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「ハイ・ライフ」は、2018年に公開されたSF映画。パリが生んだ鬼才クレール・ドニが監督を務め、主演には2017年公開の映画「グッド・タイム」の主演や、2020年に公開予定のクリストファー・ノーラン監督の映画「Tenet」の出演も決まっている俳優ロバート・パティンソン。他にもフランスの名俳優ジュリエット・ビノシュなどが出演しています。

本作は、新進気鋭の会社「A24」が配給をしており、並の映画とは一線を引いたセンスの感じられる映画となっています。劇中では宇宙空間からほぼ出る事はなくストーリーが進んでいく為、あの「インターステラー」「ゼロ・グラビティ」「2001年宇宙の旅 」を彷彿とさせる宇宙ならではの独特な世界観で統一されています。中でも、「2001年宇宙の旅」の世界観・ストーリーの構成に近い印象を受けました。

THE ROANOKE TIMES - A24/ALCATRAZ FILMS

死刑や終身刑の重犯罪者を刑の免除と引き換えに、宇宙空間で人体実験をさせ生還する見込みが限りなくゼロに近いというストーリーの為、終始重苦しく暗い雰囲気で包まれていました。それに加え序盤で、主人公のモンテが他の乗組員の死体を宇宙に投げ捨てるというショッキングかつ意味深なシーンが、ミステリアスで幻想的な雰囲気をより漂わせています。

宇宙船の中は、医師のディブス以外全員犯罪者であるので刑務所同然の環境ではありますが、人工授精が目的であるが故に薬などを使用して性欲をコントロールされる事や、宇宙空間という普段の生活からは想像も付かないくらいの閉鎖的環境・ストレスで、刑務所の方がマシなのでは?と見ているこっちが思ってしまう程に、孤独で面白みのない環境だと感じました。

SEVEN DAYS

随所で様々なメタファーが散りばめられており、生命の誕生などの神秘的なシーンが多々出てくる為、そういった観点で本作を観るのも面白いと感じました。印象的なシーンも数多く用意されていましたが、中でもダントツに際立っていたのはジュリエット・ビノシュ扮するディブス医師関連の場面。実験の事もあり被験者の性欲をコントロール・抑えなくてはならない為、自慰を行うボックスが宇宙船内に設けてあります。その中でディブス医師が自慰を行うシーンが登場しますが、エロティックな要素は一切感じられず、逆に鳥肌が立つ程に気味の悪い印象的なシーンで、名俳優は背中で語るとはよく聞きますが、まさにそんな背中で語る迫真の演技でした。

個人的にジュリエット・ビノシュを映画で見た記憶がないので、初めて彼女を見ましたが、お尻より長い長髪が印象的なフランスのおばさんといった印象。同じフランスの名俳優イザベル・ユペール(67)より10際も年下なのに、彼女よりも年上に見えてしまう程の貫禄のあるルックスでした。 この長髪の理由については、cinetilの独占インタビューでクレール・ドニ監督が話していました。

彼女は地球を出発してから一度も髪を切らないことにしたのです。宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキング博士は、遠く宇宙まで旅をするとき、人間の生命はあまりにも短いので、おそらく地球に戻ることはできない、だから宇宙空間での生殖を考えるべきだと言っています。しかし、宇宙で子どもをつくることはとても難しいことです。ジュリエット・ビノシュ演じるディブス博士もまた犯罪者であって、夫や子どもを殺していますけれども、宇宙で少なくともひとりは子どもを生むという自らの任務に取り憑かれています。

本作の作曲は、映画の雰囲気に絶妙にフィットした素晴らしい音楽でしたが、ティンダースティックス(TINDERSTICKS)のスチュアート・A・ステイプルズが作曲を担当しています。ティンダースティックスはイギリスのオルタナティブロックロックバンド。メンバーのステイプルズは、本作の監督クレール・ドニが制作した「ガーゴイル」「レット・ザ・サンシャイン・イン」など数々の映画の作曲を担当してきた人物です。ぜひアメリカの映画でも作曲を手がけて欲しい所です。

映画「ハイ・ライフ」は、神秘の代表格とも言える「宇宙」をうまく利用して神秘的なストーリーで構成された美しい映画でした。